アルコール依存症を治療する5つの思考と効果的な3つの方法




今回のテーマは、

アルコール依存症を治療する5つの思考と効果的な3つの方法について。

アルコール依存症と聞くと、「病気じゃなくて性格の問題」だとか、「一生治らない」という印象があるかもしれませんが、アルコール依存症とは精神障害で、治療は可能です。

では、依存症の治療とはどういったものなのか、プロセスごとの患者本人の考え方の思考パターンや、効果的な3つの方法について考えていきましょう。

アルコール依存症は治療する方法がある?

健康診断の前日に飲酒はNG

アルコール依存症とは、「アルコールの過剰摂取の習慣による身体的・精神的依存が引き起こす様々な病気」全体をさしている病名です。

POINT考え方のパターン、飲酒している時にもたらされるマイナスの効果を上回るプラスの効果と、体にできる依存システムからいかに離れていくかが治療のカギとなります。

アルコール依存症を治療する5つの思考

お酒を飲んで吐くまでの流れ

「アルコール依存症を治療する」というよりは、「治療に向かう」5つの思考、とした方がいいかもしれませんが、ここでは治療を必要としない時期から治療を続けるまでの段階でどのような思考パターンをたどるのかを簡単にお伝えします。

1) 自分にはお酒の問題はない

この時期は、飲酒によるマイナスの効果(二日酔い、遅刻など)よりもプラスの効果(陽気でいられる、人とうまく付き合えるなど)が大きく感じられ、周りも心配になりつつも強制的に病院に連れて行くということは少ないでしょう。

元々真面目な性格の人が多いアルコール依存症。

自分の行動が以前の自分とは違うと思えるようになるまでにはややしばらく時間が必要な場合が多いです。

2) お酒はやめた方がいいかもしれないけれど、そこまでひどくはないはずだ

本人はまだまだ自分のお酒に問題は感じていないように見えるこの時期。

周りはもう「どうしたらお酒をやめてもらえるだろうか」と深刻に悩み、あちこちに相談し始めているでしょう。

周りから見れば、二日酔いはひどい、迎え酒はする、酔っていない時と酔っている時では様子が違いすぎる、仕事ができなくなっているなど、問題は山積みです。

ご本人にとっても、プラスの効果とマイナスの効果を天秤にかけると少しマイナスに傾くことが多くなってきたかもしれない、と薄々感じられるようになっています。

しかし、ここで問題なのは身体依存が出来上がっていて、離脱症状を恐るあまり断酒をすることができないことです。

「お酒の量は減らしてみるよ」と言い始めることもあるかもしれませんが、それが成功することはありません。

3) お酒を飲まずにいると不安で仕方ないことが不安に思えてくる

身体依存が出来上がると、精神依存もほぼ出来上がっていると思っていた方が間違いありません。

身体依存というのは、「お酒を飲まないでいると体に離脱症状(禁断症状)が現れる」という状態ですが、精神依存は同じく「お酒が切れてくると不安や焦りでいてもたってもいられなくなる」という状態です。

「お酒さえ飲めばうまくできるから」という発言が増え、いざという時、シラフなんかでいられません。

そしてそのことでの失敗も増えてきて、「自分はお酒がないと不安で仕方がない」ということに気づきはじめ、プラスの効果とマイナスの効果を天秤にかけるとマイナスの効果の方に傾がることが増えてきます。

4) お酒をやめるために、誰かの手伝いがいるのかもしれない

この頃には、節酒が失敗に終わることも分かってきて、体もしんどく、家族の視線も周りの視線も冷たく感じられ、どうやら自分ひとりではお酒をやめることはできないようだ、と悟ってきます。

5) もう二度とうまくお酒を飲むことはできないのだ

アルコール依存症は「否認の病」と呼ばれる病気です。

これまでの1)から4)の思考を繰り返し、何度も失敗しながらこの5)にたどり着く人、たどり着いても続けられない人、それぞれの道が分かれます。

この5)の段階にたどり着いた時に、「自分は二度とお酒をうまく飲めない」という考えをいかに定着させてゆくかが、治療に重要なカギとなります。

アルコール依存症を治療する効果的な3つの方法

本当に太る理由はこの3つ

これまでお話したように、アルコール依存症は身体的にも精神的にも病む病気です。

治療は可能ですが、完治は不可能で回復はします。

回復というのは、お酒を必要としない生き方を続けるという状態です。

飲む理由付けをしなくなる思考パターンを身に付け、それを一生続けていく。

そのためにはどのような治療が効果的なのでしょうか。

1) 断酒の開始・継続と、解毒治療

飲酒を続けることで体に深刻なダメージがあることは、皆さんご存知だと思います。

治療を始めよう、となった時、まずできることは「断酒の開始と継続」「身体的な病気の治療(解毒治療)」です。

中には、深刻なうつ病を併発する人もいますので、まずは断酒しつづけながら投薬治療を受け、アルコール依存症の治療をするまでに体と心の休養をしっかりとります。

入院することも多いので、ご家族や親しい人たちも休養する時間をとることができます。

2) 断酒の継続と、精神療法によるアルコール依存症の治療

解毒治療が終わって、少しずつエネルギーを取り戻したら、個人カウンセリングやグループワーク、作業療法といった集団精神療法を開始します。

飲酒していた頃の思考回路を改めてふり返り、問題を見つめ、何がお酒に駆り立てたのかを考え、シラフでその問題とどうつき合うのかを考えます。

また、作業療法などを通じてお酒を飲まない時間を作り、飲まなくても生きていける実感を持ってもらうことも効果的だと言われています。

3) 断酒の継続と、通院によるフォローと自助グループへの参加

アルコール依存症の治療において、最も長い期間を要するのが「自助グループへの参加」です。

精神科でアルコール依存症のためにできることは、実はさほど多くありません。

生活の中でのお酒を必要とする瞬間を毎日見つめ、それでも飲まないという選択をするための助けとなるのは、自助グループと仲間の存在であるということは依存症業界では常識です。

社会生活に戻り、家族や周りとの関係も修復されることもあるかもしれませんが、アルコール依存症は治りません。

「自分はアルコール依存症である」ということを忘れないために、また毎日の思考パターンの点検をすることで、回復への道を歩き続けることが可能になるのです。

アルコール依存症を治療する5つの思考と効果的な3つの方法のまとめ

アルコール依存症を治療する5つの思考と効果的な3つの方法

繰り返しになりますが、アルコール依存症は、「完治しないけれど回復する病気」です。

病気を自覚するまでにも時間がかかり、回復をし続けるということは一生のことですから、とても気の長い話になります。

「否認の病」と言われるように、「自分は悪くない」と治療を始めない人も大勢います。
そういう人には、こう伝えましょう。



「あなたのお酒の飲み方には問題があって、それは変えないと死んでしまうのだ」
と。

治療を始めても「自分はあんなにひどくない」と思いたがるし、「もう二度とお酒を飲めないなんて信じられない」と思うこともあります。

誰かと比べてひどいかどうかは問題ではなく、ご本人のお酒の飲み方は問題なのだということを理解できれば、治療はきっと続けられます。

治療にたどり着くまでの思考パターンを理解して、「お酒を飲まないことで手に入れられる自由」の多さを周りと共有しながら諦めずに回復の道を歩いていきましょう。