今回のテーマは、
女性がアルコール依存症になり易い3つの理由と症状別の対処法について。
昔から、働き盛りの男性の病気というイメージが強かったアルコール依存症ですが、実は女性の罹患率も大変高いことが近年分かってきています。
今回は、女性ならではのアルコール依存症になりやすい理由と、その対処法についてお伝えしていきます。
女性によるアルコール依存症は増えている?
「アルコール依存症は男性がなる病気」だというイメージはありませんか?
酔っ払って公園のベンチで寝ている人は大抵サラリーマンのオジサマ方だという描写が、漫画やドラマなどでも多く描かれてきましたね。
しかし、この20年ほどの間に、女性のアルコール依存症の増加が問題となってきています。
増加、というのは正しくないのかもしれません。
潜在的なアルコール依存症の女性は、男性もそうであるようにとても多かったのですが、女性の社会参加の機会が増えるにつれて「女性のアルコール問題が目につきやすくなった」というのが正しい言い方でしょう。
外で飲酒する機会が増えれば、外で発見されることも多くなるので当然ですね。
実は、女性には男性にはない体の構成上の問題から、アルコール依存症になりやすい、依存症になるまでの期間が短いなどの特徴があります。
次に、その理由の大きなものを見ていきましょう。
女性がアルコール依存症になり易い3つの理由
女性には、男性にはない臓器が多いことはご存知のことと思います。
そのため、アルコールの毒素を分解することが男性よりも不得手な体とも言うことができます。
また、女性に関することでは「ジェンダー(性別役割分業)」が昔から話題になりがちで、近年でも「女性が活躍する社会」が目指されるなど、その存在には男性にはない特別な観念があることも事実です。
では、具体的に身体的・社会的にどういった要素が女性のアルコール依存症を起こさせているのでしょうか。
ご存知のように、女性には子宮や卵巣といった臓器があるために、女性ホルモンが活発に分泌され、そのため肝機能がアルコールを分解する力を阻害されることが知られています。
男性に比べて体も小さく、脂肪の量が多くて水分も少ないことから、アルコールの血中濃度が上がりやすく、同じ量のアルコールを分解するのに時間も手間もかかります。
ということは当然、男性よりも飲酒できる量は少なく、アルコールの毒性物質が体に蓄積されやすいため、臓器のダメージも大きく、またアルコール依存症になることが容易であると言えます。
男性に比べて、女性の方が結婚・出産・子育てというライフイベントによって生活に影響が大きくなりやすいのはよく知られていることです。
今は男性も育児休暇を取る人が増えるなど、少しずつ女性だけに負担がかからないようになっているように思われていますが、実はさほど大きな助けにはなっていなかったり、出産後の体のダメージを言い出せずにゆっくり休むこともできない女性が多いのが現実です。
そうすると、多くの女性は求められる役割をこなすのに必死になりすぎて、どこで力を抜いていいのか分からなくなることが多いようです。
お酒を飲んでみると、ふと力が抜けて楽しい気持ちになり、ぐっすり眠れた、などのお酒によるプラスの効果が大きく感じられて、結果「お酒を飲んでいる時だけは私自身に戻れる」といった思考回路になってしまい、お酒に逃げ場を求めるようになってしまいがちなのです。
上述したように、女性には女性ホルモンの影響で様々な不具合が心身ともに起こりやすく、また環境の変化に伴うストレスも大きくのしかかる場合が多いです。
昔から女性達は、「良い妻」「良い母」だけではなく「良い娘」であることが周囲から期待され、それに歯向かうことが許されない場合が圧倒的に多く、そういった女性達がアルコール依存症になる前に摂食障害やパニック発作といった精神的な病を抱えながら生き延びているのが現代の日本です。
しかし、女性達はそういった精神的な病についても理解されづらい環境に置かれているのです。
「良い娘」「良い妻」「良い母」という役割をこなすことの重圧から自由になることはこの21世紀の社会でも難しいのです。
その「理解されなさ」「生きていきづらさ」こそが、女性のアルコール依存症を進行させていると言っても過言ではありません。
女性ならではのアルコール依存症別の対処法
上述したように、女性が抱える様々な生きづらさがアルコール依存症への道につながっています。
では、アルコール依存症の入口をくぐらずにいるにはどうしたらよいのでしょうか?
まずはアルコール依存症の症状を見ていきましょう。
① 精神的・身体的な依存状態が見られること
「お酒を飲まないと眠れない」「お酒が家にないと落ち着かない」「お酒を飲めば勢いがついて家事も仕事もやりきれるかも」といった、精神的な依存状態がまず現れやすいのが女性です。
家事や仕事、育児や嫁業務と、女性が求められる役割は、男性のそれより多いことはご存知でしょう。
また、アルコールが体内から薄れると倦怠感や頭痛などといったいわゆる二日酔いに近い状態が現れるので、それから逃れるために飲酒する人はとても多いです。
②記憶をなくすブラックアウト状態
これは本当によく見られる症状で、依存症になる人が誰もが経験することです。
「気がついたら自宅にいた」「トイレで眠り込んでしまった」といった経験は、笑い話として披露することが多いですが、これは立派な依存症の症状です。
③お酒にまつわることで家族や周囲から注意を受けるようになる
「分かっちゃいるけどやめられない」依存症。
特に女性は仕事だけでなく、家事育児嫁業務、全てをそつなくこなすことを求められがちです。
酩酊状態ではそれができるわけもなく、男性よりも二日酔い状態を咎められることが多いのも女性の特徴です。
夫や婚家の家族、また実の両親からの叱責、子どもからの反応など、気になる要素は盛り沢山で、それをなんとか挽回しようと空回り、自己嫌悪からさらに飲酒量が増えるのが女性のアルコール依存症の特徴と言えます。
次に、これらの症状への対処法を考えていきましょう。
①アルコールによるプラスの体験をなくすこと
依存状態に陥るには、アルコールによるプラスの体験「よく眠れた」「よく家事や仕事ができた」といったプラスの効果が大きいせいですね。
女性はホルモンバランスから不眠になったり過眠になったりと、眠りのバランスが取りづらいことも事実です。
そこで、生理や婦人科系の臓器の状態をしっかりコントロールするよう婦人科を受診することをオススメします。
上述したように、女性は眠りだけでなく生理に関わる不具合がとても多く、精神的にも不安定になったり、飲酒量が増えるのは生理前後や排卵期であったりすることも知られています。
子宮や卵巣といった不具合を多く抱えているのにも関わらず、未治療のまま飲酒を続けて、断酒を開始してから婦人科系の病気があることに気づく人も少なくありません。
女性がアルコール依存症になるのを防ぐのには、婦人科系のメンテナンスをしっかりすることが不可欠と言えます。
PMSの治療を開始したら、飲酒の必要性が嘘のようになくなったという人もいるほどです。
状態に応じて、婦人科医から必要なお薬が処方されますし、場合によってはよい心療内科を紹介してくれますので、お酒に頼る前にきちんと受診して必要なケアを受けるようにしましょう。
②酩酊状態にならないように、事前に肝機能の働きを助ける工夫をする
女性はアルコールの分解能力が男性よりも低いので、まずはそのサポートをしっかり行い、酩酊状態及び二日酔いをしっかり防ぎましょう。
水分を多めに摂ったり、事前に肝機能を助けるサプリメントを飲んだり、果物や野菜を摂りながら飲み会に参加したりといった工夫が考えられます。
幸い、女性は「サワーです」と言いながら果汁100%のソフトドリンクを飲んでいても目立ちませんから、そういった女性ならではの武器を使いましょう。
③周囲にサポートをお願いする
たとえば、家事と育児をしっかりこなそうと思っても体が弱いとか体力が追いつかないといったことはあります。
そういった時に、「できない自分」であることを卑下するのではなく、まずはサポートしてくれる人を見つけておきましょう。
毎日できないわけではなく、時々できなくなる、という場合が大半ですから、そういう時に実家や婚家の家族を頼ったり、地域の保育システムやママ友を頼れるように、普段から周りとパイプ作りをしておくことをオススメします。
結婚は異文化コミュニケーションで、相手の文化が優先されて自分の文化をやんわり否定されることも少なくありません。
その時に、「うちってこうだよねぇ」と愚痴をこぼせる相手を味方につけておきましょう。
両親、兄弟姉妹、従兄弟、叔父叔母(伯父伯母)、血縁のある「文化を共有している人」と連絡が取れて、自分を否定されないということは思いのほか役に立ちます。
また、出産と子育ての時期には、最近では助産院などが徹底的にサポートしてくれる体制を整えているようです。
かかりつけの病院の助産師さんや、地域の保健センターの保健師さんなど、頼れる人は沢山いますので、様々なサポーターを探しておきましょう。
女性がアルコール依存症になり易い3つの理由と症状別の対処法まとめ
今回は、女性がアルコール依存症になりやすい3つの理由と対処法についてお話してきました。
簡単におさらいをしておきましょう。
2)ライフイベントによる生活の変化の影響を受けやすいから
3)ストレスを受けていても、そのことの解消に関する周囲の理解を得られづらいから
2)酩酊状態を防ぐために、肝機能を助けるサプリメントを日常的に飲み、水分や果物、野菜を多めに摂りながら飲む
3)飲酒時だけでなく、自分が仕事や家事育児、嫁業務ができない時のサポートを周囲にお願いするようにサポーターを何人も見つけておく
これまでお伝えしたように、まだまだ女性は「生きづらい」社会を生き延びています。
生きづらさを抱えているのは、男性にも見られることですが、女性はそのジェンダーに関する制約が男性より強いということはご理解いただけるでしょう。
「産み育てる」性として、またそれを選ばなかった場合にも「できるのに産みも育てもしなかった」人間として、それぞれ周囲からの視線が気になる存在だからです。
その生きづらさを解消するための手段としてのお酒が、逆に身を滅ぼしていくのはあまりにも理不尽なことです。
今回お伝えしたように、様々な対処法がありますので、自分に合った方法を見つけていけるといいですね。