アルコール依存症の治療期間を症状別や治療方法でまとめた




今回のテーマは、

アルコール依存症の治療期間を症状別や治療方法でまとめた
について。

周囲とご本人の問題意識の温度差により、アルコール依存症と診断されても直ぐに治療を始めない患者さんがいる場合があり、周りからはどう見てもひどい状態なのに、当の本人には症状の重さが理解出来ず、治療を行う気配は一切ナシ。

今回は、客観的に見ての重症度別に治療の方法と期間についてお伝えしていきます。

軽度で薬によるアルコール依存症の治療期間

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アルコール依存症において「軽度」の条件は、「通院治療が可能である」という状態のことで、以下の条件が揃っていることが必要です。

  • 身体的な合併症が出ていないこと
  • 離脱症状が軽度であること(手の震えだけとか、発汗だけとか)
  • 治療意欲が高く、治療者の指示に従うことが可能であること

治療の導入期開始の1ヶ月は、毎日通院することが求められることが多いので、治療意欲がよほど高くなければ継続することは難しいです。

この場合は、おそらく精神症状もほとんど出ておらず、抗酒剤を毎日服用する以外には服薬指示は出ないことが多いです。

通院治療は、概ね3ヶ月集中的に通院して集団精神療法や個別のカウンセリングなどを経て、自助グループにつながり、社会復帰へと向かっていくことが多いようですが、4ヶ月目以降も月に1度から2度は通院して自分の状態を治療者とともに振り返ることが求められます。

軽度の人の場合は、通院の頻度が徐々に減少し、1年経つ頃には抗酒剤は処方されず、通院も半年に1度に減少し、断酒後2年経つ頃には、通院は困った時のみという形になる場合がほとんどです。

中度で薬、入院によるアルコール依存症の治療期間

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  • 身体的合併症
  • 強い離脱症状
  • 断酒を試みるも再飲酒(スリップ)を繰り返す

上記の様になっていれば、入院が必要になってきます。

一人で断酒が難しいと周りが判断しての入院するパターンが多いようで、ご本人は「家族がそんなに言うなら入院してやるか」くらいの状態のことが多いことも特徴です。

また、この場合は身体的不具合が大きいので、内科に入院してそこから精神科へ転院するというパターンも多く見受けられます。

ご本人は飲酒に問題があると思っていない場合が多いので、先ずは内科に入院してもらって精神科になんとか連れていける段取りを入院中につけよう、と家族が治療者と計画することも少なくありません。

この場合の入院の流れは以下のようになります。

  • 1ヶ月目  解毒:離脱症状の緩和と身体的合併症の治療を行なう
  • 2ヶ月目~3ヶ月目  リハビリテーション開始、自助グループへの参加、職場や家族との調整

この、1ヶ月目の途中にシラフになってみて初めて精神科的疾患が出てくる場合もあり、うつ病などがその代表格で、抗酒剤を毎日服用することと、断酒すると途端に眠れなくなる場合があるので、抗うつ薬や睡眠導入剤などの処方が多くみられます。

抗酒剤は前述したように少なくとも1年間、抗うつ薬や睡眠導入剤も1年ほど服用する人が多いようです。

退院する頃には、入院したての頃よりは抗酒剤以外の強さは軽減していますが、ベースがうつ病でアルコール依存症は二次疾患であるという場合も少なくありませんので、主治医とよく相談の上減薬するようになります。

重度で入院によるアルコール依存症の治療期間

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「重度」と一言で言っても症状は様々ですが、「身体的合併症が重い」「精神症状が強く出ている」「治療意欲が低い」という状態の人の場合についてまとめます。

この場合も、中程度の症状の人と同じく、まずは解毒から入り、飲酒を続けたことで体は相当ボロボロになっていますので、1ヶ月以上はかかって体を整えながら断酒を始めることになります。

肝臓の疾患が進んで肝硬変の一歩前だったり、もう肝硬変だったり、重度の糖尿病や膵炎であったり、体に出る病気も様々です。

また、離脱症状も激しく出ますし、シラフになってみると認知の歪みがかなり進んでいる場合も少なく、この場合はリハビリテーションの期間が長く取られますので入院期間もおのずと伸びます。

アルコール依存症に関する教育プログラムの他、個別のカウンセリングや集団精神療法、自助グループの参加を入院中にしっかり定着させる必要があるためです。

また、家族や周囲の人との関係が破綻している場合が多いので、その関係修復や退院先の選定などにも時間がかかります。

前述したように3ヶ月でスムーズに退院することは困難と思っていた方がよいでしょう。

抗うつ薬は退院の時にほとんどの場合に減薬あるいは終了していますが、睡眠導入剤だけは2年以上服用する人が多いことも確かです。

また、重度の人の場合、家族の希望で抗酒剤を数年間服用する人もいます。

それぞれの回復の度合いと周囲の人との関係修復の度合いにもよりますが、依存症が重度になっている場合は、周囲との関係悪化の度合いも重度になっているのでそういったことも服薬期間に関係してきます。

アルコール依存症の治療期間を症状別や治療方法でまとめたのまとめ

アルコール依存症の治療期間を症状別や治療方法でまとめた

ここまで、アルコール依存症の服薬期間や入院期間についてお話してきましたが、程度によってその期間や内容は様々です。

〈軽度の場合〉

  • 抗酒剤は1年間程度服用
  • 通院は断酒開始から1年間はしっかり

〈中度の場合〉

  • 抗酒剤は同じく1年程度服用
  • 必要に応じて抗うつ薬、抗不安薬、睡眠導入剤を1年程度服薬し、減薬あるいは終了の方向へ
  • 入院期間は概ね3ヶ月程度で、教育、リハビリテーションを重点的に行なう

〈重度の場合〉

  • 抗酒剤は長期で服用
  • 必要に応じて抗うつ薬、抗不安薬、睡眠導入剤を長期で服薬し、減薬あるいは終了の方向へ
  • 入院期間は3ヶ月以上(長期の場合1年以上になることも)で、教育とリハビリテーション、自助グループへの参加の定着を重点的に行なう
  • 自宅に退院する場合は少ない

まとめると以上のような違いがあります。

まず、軽度の場合を除いて入院は必須であるという認識でいれば間違いありません。

依存症治療は、基本的に精神薬に頼らないで行なう方針である病院が多いので、服薬期間はその病院によっても異なりますので、通院・入院する病院のスタッフとよく相談の上、治療を開始しましょう。